研究課題
基盤研究(B)
多電子励起分子は、化学の基本ともいえる一電子平均場近似とBorn-Oppenheimer近似がともに成り立ちにくい、非常に興味深い研究対象である。代表者らは、多電子励起分子の観測に多大な威力を発揮する光子標識付き電子エネルギー損失法と(γ,2γ)法を最近相次いで実現した。本研究ではこれらを駆使して、二原子分子から始め、多原子分子に至るまで、各種の分子について多電子励起状態を探索し、その量子ダイナミクスを解明することを目的とした。Lyman-α光子標識付き電子エネルギー損失分光法をCH_4に適用し、入射電子エネルギー80eV、電子散乱角12,24°のもとで損失エネルギー20-46eVの領域で、スペクトルを測定した。そこには、一電子励起状態に由来するピークのほかに、二電子励起状態に由来するピークが、むしろより強く現れた。異なる散乱角で測定した角度微分断面積を共通のスケールに乗せることができるようになった。二電子励起の角度微分断面積の電子散乱角依存性が、一電子励起の微分断面積のそれとは異なることがわかった。同様の方法をNH_3に適用し、入射電子エネルギー100eV、電子散乱角8°のもとで、損失エネルギー15-48eVの領域でスペクトルを測定した。やはり一電子励起状態に由来するピークのほかに、二電子励起状態に由来するより強いピークが現れた。さらに異常に細いピークが現れた。(γ,2γ)法をN_2とO_2に適用し、一光子吸収・光子対放出過程の断面積を入射光子エネルギーの関数として、23-50eVの範囲で測定した。多くの多電子励起状態に由来するピークが現れた。驚くべきことに、それぞれの二重イオン化しきい値を超えてなお多電子励起状態に由来するピークが現れる。本研究により、多電子励起分子が確かに存在することと、その量子ダイナミクスがこれまでの常識では理解しにくいことが明らかとなった。
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