研究概要 |
ハイドレートケージ内のベンゼンおよびメソ細孔中のベンゼンと水および細孔壁との相互作用を分光学的手法によって測定し,溶存状態の特徴,励起状態におけるダイナミクスを光化学的立場から明らかにすることを目的として研究した.1、ベンゼンおよび重ベンゼンのハイドレート:最も基本的な芳香族分子であるベンゼンのハイドレートに関する実験データは非常に少ない.キセノンをヘルプガスとするハイドレートケージ内のベンゼンのラマンスペクトル,蛍光スペクトル,蛍光寿命を測定した.4相共存曲線と共に実験の論文およびラマンスペクトルの理論的解析の論文としてまとめている.2、メソ細孔中の水の構造:OH伸縮振動のラマンスペクトルの測定によりメソ細孔中の水の構造を調べた.細孔壁に存在するシラノール基(Si-OH)のOH伸縮振動と水分子のOH伸縮振動の分離ができずまとめられなかった.3、メソ細孔中のベンゼン水溶液:ベンゼンの励起状態ダイナミクスはベンゼンS1状態から細孔壁中の構造欠陥への励起移動が主たる失活過程であることを示した.4、メソ細孔中のベンゼン液体:ベンゼンと細孔壁との局所的な分子間相互作用がバルクの性質を支配していると考えられる結果を得た.細孔径4.3nmではベンゼンは80Kでも凝固せず,7.8nmの場合1次転移を示す明確な発熱ピークが観測されない。この結果はメソ孔内のベンゼン液体構造は細孔壁からの距離に依存して徐々に変化することを示している.5、有機一無機ハイブリッドメソ多孔体:基本的な系であるフェニレンシリカメソ多孔体の壁面の励起状態ダイナミクスを明らかにした.励起状態ダイナミクスを壁面構造と関連付けてその温度依存性を説明してまとめた.6、メソ多孔体中の発光性構造欠陥を調べて石英中の構造欠陥の研究を参考に整理した.
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