研究概要 |
高性能な燃料電池開発に資するため、本研究では、1.高温、酸化・還元雰囲気下での中性子回折測定法を開発し、核密度レベルでの構造評価法を開発すること、及び2.ペロブスカイト型混合伝導性材料について核密度(及び電子密度)レベルでの構造と導電特性との関係を解明することを目的としている。今年度の主な研究成果は以下の通り。1.(La,Sr)MnO3系ペロブスカイト型化合物を中心に高純度試料を合成した。2.混合伝導性材料を構成する陽イオンの価数、陽イオン周りの酸素の配位数などを明らかにするため、(La,Sr)MnO3系化合物について、空気中、室温において、実験室系XAFS装置(産総研設置)を用いた測定を開始した。3.高分解能放射光X線回折システム(高エネルギー加速器研究機構-フォトンファクトリーに設置)を使用し、CaTiO3について、空気中、室温〜1400℃の温度範囲で回折データを収集した。取得したデータについて、リートベルト法と最大エントロピー法(MEM)を用いた解析を行い、結晶構造内の電子密度分布を可視化した。4.高温中性子回折システム(日本原子力研究開発機構東海研究開発センター-改造3号炉、HERMESに設置)を使用し、(La,Sr)MnO3系化合物について、空気中、室温〜1200℃の温度範囲で回折データを収集した。取得したデータについて、リートベルト法とMEMを用いた解析を行い、結晶構造内の核密度分布を可視化した。5.雰囲気制御可能な試料加熱装置を設計し、試運転を行った結果、当初目的とした(La,Sr)MnO3系化合物の測定に必要な温度範囲(室温〜約1000℃)では十分な性能が得られることが分かった。試運転に用いた電源装置のトラブルのため、最高仕様温度1600℃までの性能は未確認である。今後、電源装置の修復を待って1600℃までの性能確認を行い、必要であれば装置改良を実施する。
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