研究概要 |
本年度は、Zn、Cd、Sc、Y、La及びSnなどの金属とCOとの反応に焦点を絞ってレーザーアブレーションマトリックス単離赤外分光法を用いて研究を行い、反応(中間)生成物の構造、結合性質と反応性及び反応エネルギーと反応機構を解明し、また、異なる波長の光照射下での光反応(中間)生成物の構造と反応性を明らかにした。特に、Znに関しては、従来報告されていなかったZn(CO)3を見出し、構造を解明した。これは、Cr(CO)6、Fe(CO)5、Ni(CO)4シリーズの新しいメンバーとなり、金属カルボニル化学においては重要である。Sc、Y及びLaに関しては、異常に低いCO伸縮振動数(1200cm-1付近)と弱いC-O結合を示すside-on-bond型金属-CO結合(C及びOが同じ金属に配位)を持つ新規M2CO(M=Sc, Y, La)化合物を見出し、COがM原子と普通に相互作用するところ(terminal-,bridging-bond)から始まり、M2クラスターに結合してC-O結合が半開裂した中間状態(side-on-bond)の形成、最後にC-O結合が完全に開裂した分子の形成へといったCOの活性化・解離過程の各段階のスナップ写真撮影に成功した。これらの結果は、金属クラスター上におけるCOの活性化機構に新しい重要な知見を与えるものである。さらに、11族金属Cu, Ag, Au原子とCOやO2との反応について研究を行い、11族金属におけるCO酸化反応機構を明らかにした。この成果は国際学会International Conference on the Science, Technology and Industrial Applications of Gold(Gold 2006)からKeynote Lectureの依頼を受けた。
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