研究概要 |
「ロータン」はシクロアルカンの各頂点に別のシクロアルカンがスピロ結合した分子である。一方,「コロナン」はロータンの構造異性体であり,シクロアルカンの各辺に別のシクロアルカンが縮環した構造を持つ分子である。シクロヘキサン環の各辺にシクロブタン環が縮環したコロナン,すなわち[6.4]コロナンは,理論計算からシクロヘキサン環が平面になると予想されているが,未だその合成は報告されていない。コロナンで唯一合成が報告されているのは[6.5]コロナンであるが,その構造は平面型ではなく,イス型であることが明らかにされている。 昨年度までの研究により,研究代表者は初めてのコロナンのケイ素類縁体である,ヘキサシラ[6.5]コロナン(1)が平面型シクロヘキサシラン骨格を有すること,またこの化合物がヘキサシラ[6.4]ロータン(2)を反応中間体とするドミノ倒し型連続転位により生成する可能性があることを示した。本年度は,この反応機構の妥当性を検討するため,より歪みが小さく単離可能なヘキサシラ[6.5]ロータン(3)を合成単離し,その転位反応性について検討した。3にフッ化物イオンや塩化アルミニウム等のルイス酸を加えて異性化を試みたが,期待されるヘキサシラ[6.6]コロナンは得られず,不均化や重合が起きることが分かった。その結果から,この転位反応には中間体である2に含まれるシラシクロブタン環の大きな環歪みと,5配位ケイ素(シリカート)安定化能が重要であることが分かった。 また,キノン骨格の転位能力に着目し,シリル置換キノンの多量化反応についても検討した。
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