本申請課題では、ビスマスの特徴が最大限に発揮された効率的な単位反応の開発をめざして、「高原子価有機ビスマス化合物を用いた高効率酸化反応および重合反応の開発」をめざして研究を進めている。本年度においては、当初目的として掲げた課題のうち、特に『ビスムトニウム塩型酸化剤の開発』及び『ビスムトニウム塩の光反応』に重点をおき、さまざまな角度から検討を進めた。まず、Ar4BiX型酸化剤と塩基との組み合わせによるアルコールの酸化反応について、アリール基の置換基効果、塩基及び溶媒の効果を検討し、一級アルコールと二級アルコールの選択的な酸化にアリール基の立体効果および電子効果が大きな影響を及ぼすことを明らかにした。また、メシチル基を有するビスムトニウム塩が高い一級/二級選択性を発現するという興味深い知見を得た。さらに、重水素同位体効果の検討により、反応の律速段階に対する知見を得た。一方、Ar4BiX型化合物の光反応について、照射時間、溶媒、濃度、置換基の効果を検討した。その結果、ピレン骨格を有するビスムトニウム塩が、365nmの光(高圧水銀灯)照射下で容易に分解し、ビスマス-炭素結合のホモリティックな開裂に由来すると考えられる生成物(ピレニルラジカル、プロトン)を発生することが明らかとなった。これらの結果は、ビスムトニウム塩が光重合開始剤としての高い潜在能力を持つことを強く示唆しており、実際に、少量のピレニルビスムトニウム塩存在下、エポキシドモノマーが光照射により極めて短時間で重合することを見いだ
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