研究概要 |
本研究では、一重項が最安定スピン多重度(基底状態)となる長寿命ビラジカルを設計・合成し、その化学的性質を解明して新しい分子構造を構築する事を目的とし、1,3-ビラジカルの2位に高周期典型元素E(例えば、ケイ素原子)を導入したビラジカルを設計し、その長寿命化に基づく一重項ビラジカルの化学的性質の解明とπ結合のみで炭素-炭素結合が構築される新しい分子構造の構築を行っている。平成17年度は、ケイ素を1,3-ビラジカルの2位に導入する事で、2-シラシクロペンタン-1,3-ビラジカル基底一重項分子であることを量子化学計算により見出した。また、2位にゲルマニウムを有するビラジカルについても同様の計算を行い、1,3-ビラジカルの最安定スピン多重度に及ぼす2位上の元素効果と置換基Xの効果について精査する事が出来た。その最安定スピン多重度に及ぼす2位の元素効果は、一重項ビラジカルの超共役による安定化と1,3-炭素上でのπ結合性による安定化で評価できる。理論的な分子設計にもとづき、実験的に長寿命一重項ビラジカルの発生に現在着手している。今年度の新たなる理論的な発見事項としては、1,3-ビラジカルの4,5位に窒素原子を導入する事で、より一重項状態が安定化する事を見出した。これは、窒素原子による一重項ビラジカルの更なる安定化で説明できる。また、窒素元素を含んだ化合物が合成的に容易であるので、本研究目的を達成する極めて重要な知見である。
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