研究概要 |
高共役π電子系化合物は、電界効果トランジスタ(FET)やセンサーなどの高機能性材料として大変興味が持たれているにもかかわらず、合成困難なため電子状態や光特性などの基本的な物性も知られていない化合物が多くある。申請者は、ペリ環状反応を最終反応として用いることで、これら高共役π電子系化合物の高純度合成法の開発し、有機FET等の有機分子デバイスにこれらを用いることを目指した。 高いモビリティーを有することから注目されているペンタセンを、ペンタセンの6,13-位に光や熱で分解可能な架橋部を導入することで、ペンタセンの可溶前駆体を開発した。6,13-位をシュウ酸ユニットで架橋した前駆体は、一般の有機溶媒に可溶で精製も簡単に行うことができた。これにシュウ酸ジケトン部のn-π*遷移に相当する460nnの光を照射したところ、定量的にペンタセンとなった。この反応は、ガラス上に塗布した状態でも行うことができた。これにより、ペンタセン前駆体の塗布法によるFETデバイス作成に道を開くことができた。この成果は、テトラヘドロンレターズ誌の表紙を飾った。 加熱することによりイソインドールを与えることから、不安定で合成反応に用いることのできなかったイソインドールの合成等価体として、ビシクロ[2.2.2]環の縮環したピロールを見いだした。これを出発原料として用いた合成反応を展開し、新しいπ電子系を有するポルフィリノイドの合成やπ電子系の融合したポルフィリンオリゴマーの合成に成功した。一部の成果についてはすでに公表しているが、現在、これらの新しいπ電子系化合物の構造と基本的な物性を研究中である。
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