高共役π電子系化合物は、電界効果トランジスタ(FET)やセンサーなどの高機能性材料として大変興味が持たれているにもかかわらず、合成困難なため電子状態や光特性などの基本的な物性も知られていない化合物が多くある。申請者は、ペリ環状分解反応を最終反応として用いることで、これら高共役π電子系化合物の高純度合成法の開発し、有機FET等の有機分子デバイスにこれらを用いることを目指した。 ビシクロ[2.2.2]オクタジエン環の縮環したピロール、チオフェン及びフランは加熱することによりイソインドール、イソチアナフテン及びイソベンゾフランを与え、不安定で合成反応に用いることのできなかったこれらの化合物の合成等価体として用いられることをすでに報告している。これらを出発原料として、中心の窒素原子が硫黄や酸素に置き換わった高共役ポルフィリノイドの合成やπ電子系の融合したポルフィリンオリゴマーの高純度合成に成功した。これら化合物の光物性及び電子特性を検討中である。また、フッ素化フタロニトリルを還元することで、一段階でフッ素化イソインドールとすることに成功した。これを用い、フッ素化ポルフィリン類の合成を行った。現在、これらの物質の有機電界効果型トランジスタ特性を検討している。 ペンタセンに代表されるアセン類の可溶性前駆体を合成し、光や熱でアセンを生成させることで有機薄膜電界効果型トランジスタを作成し、特性の評価を行っている。
|