平成17年度は、分岐型三座フェノキシド配位子、カルベン-フェノキシド混合型三座配位子、アニソール-フェノキシド混合型三座配位子を用いて、ポストメタロセン錯体に関する研究を遂行した。分岐状三座フェノキシド配位子を有する新規な4族チタン、ジルコニウム錯体を合成して分子構造を決定した。金属-炭素結合を有する前周期遷移金属アトラン錯体を合成した。また、金属間結合を有する従来にないアトラン化合物を合成し、結晶構造を解明した。カルベン-フェノキシド混合型三座配位子を有する4族遷移金属錯体を合成して構造学的特徴を明らかにした。また、非常に嵩高いアダマンチル基をオルト位に2つ有するフェノキシド配位子を開発し、4族チタン、ジルコニウム錯体を合成した。一連の金属錯体の分子構造を解明することにより、配位子の立体効果とキレート効果について詳細に検討し、反応活性な金属錯体を設計・合成する上での重要な知見を得た。 また、金属錯体を用いて一酸化炭素及び二酸化炭素の活性化に成功した。具体的には、アニソール-フェノキシド混合型三座配位子を有するジルコニウム錯体を用いて、水素と一酸化炭素を穏和な条件下(常温・常圧)活性化し、有機物として選択的にアレンに変換する反応を見出した。また、一酸化炭素の酸素原子由来である架橋オキソ配位子をケイ素試薬によってシロキサンとして脱離させ、均一系反応による合成サイクルを構築した。さらに、二酸化炭素からアルデヒド、イミンへと変換する新規な量論反応を開発した。カチオン性4族遷移金属錯体を用いて、二酸化炭素からメタンへと変換する触媒反応を開発した。
|