平成19年度は、平成18年度に引き続き、前周期遷移金属錯体を用いた気体小分子の活性化に関する研究を遂行した。多座アリールオキシド配位子を補助配位子とする4族チタン、ジルコニウム錯体を中心にポストメタロセン錯体を合成し、それらの分子構造をX線結晶構造解析により明らかにした。また、金属上での窒素分子、一酸化炭素、二酸化炭素などの小分子の変換反応について実験化学および理論化学の両面から調査した。多座配位子のキレート効果、酸素配位子の電子的効果などについて詳細に検討し、小分子を活性化し得る非常に反応活性な金属中心の設計指針、設計理論について理解を深めた。5族ニオブ錯体についても理論計算化学を駆使して窒素分子の三重結合切断の反応機構を考察した。また、実際に合成単離したヒドリド錯体を前駆体として用いて、水素分子の還元的脱離を伴いながら、窒素分子が還元されて三重結合を切断する新しい反応を見いだした。 さらに平成19年度では、新しい4族ポストメタロセン錯体として、非常にかさ高い単座アリールオキシド配位子を有するジルコニウム錯体を合成することに成功した。かさ高いアダマンチル基をオルト位に2つ有するフェノール誘導体に加えて、五員環と六員環が縮環したヒドロインダセン骨格を有するフェノール誘導体を合成し、それらを金属上に有するポストメタロセン錯体を設計開発した。金属周りの配位環境に及ぼす単座配位子の立体効果について系統的に明らかにした。
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