研究概要 |
現在,微量元素分析用の励起源やイオン源として最も広く使用されているアルゴン誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma, ICP)を用いたICP発光分析法(ICP Atomic Emission Spectrometry, ICP-AES)およびICP質量分析法(ICP Mass Spectrometry, ICP-MS)はアルゴンプラズマしか使用できないため,(1)アルゴンプラズマでは非金属,特にハロゲンなどのイオン化能力が十分ではない,(2)アルゴンに起因した質量スペクトル干渉が生じる,(3)ランニングコストが高い,(4)分析の要望が高まっている有機試料の質量分析が困難である,などのいくつかの原理的な欠点を持っていた。また,溶液試料の利用効率も10%前後と低いため,近年分析の要求が高まっている,微小試料の分析には不向きであった。 そこで,本研究ではまず,1つのICPトーチで従来のアルゴンの他に,ヘリウム,窒素,酸素,二酸化炭素,空気など,多くの気体を自由な混合比率で安定にプラズマ化できるプラズマトーチの開発に成功した。プラズマトーチの設計に当たっては,各種プラズマの動粘度,電気伝導度を考慮した。そして,各種プラズマの温度,密度などの基本特性を分光手法を用いて計測し,比較を行なった。単一の装置で各種のプラズマの特性が同一条件で測定されたのは初めてと考えられる。 次に,市販のネブライザを用いて溶液試料を直接噴霧導入分析できる,つまり,溶液試料の導入効率が100%であるICPトーチを開発した。噴霧した試料がプラズマ中に拡散するとプラズマが不安定となるため,噴霧試料の周囲にサポートガスと呼ぶ包囲ガスを流す事で試料の拡散を低減し,安定なプラズマを生成する事ができた。
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