研究概要 |
平成17年度は超軟X線分光スペクトル測定装置用生体試料測定システムの設計および開発を行った。まず,これまでに我々が米国のPerera博士およびALSグループと共同開発した溶液試料用軟X線分光スペクトル測定装置を参考に(株)アイリン真空と共に超軟X線分光スペクトル測定装置用生体試料測定システムの基本設計を行った。今回の装置では,7種類の可動軸を持つように開発を行った。また,検出器には通常のフォトダイオードに加え,生体試料中の濃度の低い元素を測定するために高い検出能を有する大口径SDD検出器を(株)X線技術研究所から今回の装置用に特注で購入した。購入した各装置の取り付けおよび動作確認を行った。 平成18年度は17年度に作製した超軟X線分光スペクトル測定装置用生体試料測定システムをシンクロトロンのビームラインに接続するための差動排気システムを設計および製作した。製作した差動排気システムを用いて17年度に製作した超軟X線分光スペクトル測定装置用生体試料測定システムを佐賀県立九州シンクロトロン光研究センターの県有ビームラインBL12に接続を行った。接続完成後,生体試料に含まれる代表的な金属イオンとしてナトリウムイオンのin-situ測定をめざした。そこで本システムの溶液セルを用い,飽和濃度の塩化ナトリウム水溶液のNa K XANESスペクトル測定を行った。その結果,粉末の塩化ナトリウムの測定結果とはピーク形状が明瞭に異なるNa K XANESスペクトルを測定することができた。このスペクトルをDV-Xα分子軌道法で解析したところ八面体構造を持つ6水和イオンであると解析できた。この結果より,本装置により生体試料中の軽金属イオンのXANESスペクトルがin-situで測定・解析できることが明らかになった。
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