本研究は、酸素だけではなく他の不活性小分子の活性化を行い、詳細な電子構造を解明することを目的とした。さらに遷移金属イオンを用いた不活性小分子の活性に関する統一的理解を目指し、次にあげる6つの方法論を中心に、多くの錯体の合成・解析を行った。 1.新規配位子、N4三脚型配位子トリス(ピラゾリル)アミンおよびかさ高いN2型配位子ビス(ピラゾリル)メタンを合成し、配位子の窒素原子の数、電荷、置換基のかさ高さが銅(II)錯体の構造・性質にどのような影響が与えるかを詳しく検討した。 2.トリス(ピラゾリル)メタンを配位子として銅-酸素錯体の構造、性質の解明を行った。ボレート配位子をメタン配位子に換えると、各々の構造では、Cu-O結合が短くなり、O-O結合が長くなった。この変化は共鳴ラマンスペクトルの測定結果と一致した。 3.酸素配位子だけではなく、二酸化窒素イオン、硝酸イオン、一酸化炭素、一酸化窒素を用いて、一連の錯体の合成、構造決定、詳細な分光解析を行った。 4.単核銅酵素の中間体のモデルとなる、フェノール、カテコール錯体の生成およびその活性化機構の解明を行った。銅(II)フェノキソ錯体を合成し、その電子構造を詳細に検討した 5.α-ケト酸を活性中心に持つ酵素の反応機構を解明するためにモデル錯体を用いた反応速度の検討を行った。水酸化される側の配位子の置換基効果は全体の反応速度に影響を与えないことがわかった。水や電子などの影響も検討し、新しい反応機構を提唱した。 6.エチレン重合反応をトリス(ピラゾリル)メタン配位子を用いると、重合活性が高くなったが、分子量分布が広くなった。 以上のように、本研究に関する多くの成果を得ることができた。
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