研究概要 |
医薬、液晶材料等の生理活性や機能性を有する分子の三次元骨格(chirality)を構築するための不斉合成は,Chiro-Technologyと呼ばれ,現代社会を支える基盤化学技術となっている。我々は、新規なChiro-Technologyとして動的キラルなラセミ配位子、遷移金属、不斉活性化剤の高次組織化に基づく「不斉活性化法」を開発している。これは,潜在的に不斉反応場を有する動的キラルな遷移金属錯体に対して不斉活性化剤が自己組織的に複合化し、不斉反応場を顕在化させると同時に触媒活性を向上させる手法である。新規Chiro-Technologyとしての不斉活性化法が「触媒的不斉合成」に対する新機軸となると考え、本申請課題では「『不斉活性化』を基盤とする動的キラル触媒の開発」を目的としている。 今回はまずキラルアミン部分をもつビスフェニル型phosphoramidite配位子を用いた錯体の不斉制御と不斉共役付加反応への活用について検討した。配位子を2分子配位させたPd錯体のDFT計算による最安定構造を求めたところ、錯体はC_2対称な立体配座、またPhosphoramidite部分はC_1対称な立体配座をとっていることが分かった。さらに銅触媒をニトロスチレン及びニトロアクリレート基質と有機金属試薬による不斉共役付加反応に用いたところ、基質に依存せず・-ニトロスチレンでは99%、98%ee、ニトロアクリレートエチルエステルでは99%、93%ccと高い触媒活性、エナンチオ選択性を示した。・-ニトロスチレン誘導体についても不斉共役付加反応を検討し、MeO基などの電子供与基、CF_3基などの電子吸引基を有する基質でも90%eeを超える高い不斉収率を達成した。
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