研究概要 |
我々は、新規なChiro-Technologyとして動的キラルなラセミ配位子、遷移金属、不斉活性化剤の高次組織化に基づく「不斉活性化法」を開発している。これは,潜在的に不斉反応場を有する動的キラルな遷移金属錯体に対して不斉活性化剤が自己組織的に複合化し、不斉反応場を顕在化させると同時に触媒活性を向上させる手法である。新規Chiro-Technologyとしての不斉活性化法が「触媒的不斉合成」に対する新機軸となると考え、本申請課題では「『不斉活性化』を基盤とする動的キラル触媒の開発」を目的としている。 今回は動的キラルなラセミ配位子としてBIPHEP誘導体を用いて、得られた光学的に純粋な錯体において置換基による軸不斉の安定性への影響を詳細に検討した。その結果、立体的に嵩高いt-Bu基を4,4'位に導入することで軸不斉が不安定化することが分かった。これは5,5'位にt-Bu基を導入したときに安定化するのとは対照的な結果である。またX線結晶構造解析の結果から、4,4'-t-Bu-BIPHEP-PdCl_2錯体とは異なり5,5'-t-Bu-BIPHEP-PdCl_2錯体はその立体障害から平面四配位構造が非常に歪んでいることが明らかとなった。
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