研究概要 |
平成17年度は、配位可能なホスフィン部位を有する光学活性らせん状キノキサリンポリマーの合成を行うとともに、同ポリマーの触媒的不斉合成における高分子配位子としての利用について予備的な検討を行った。まず、キノキサリンポリマー合成に用いるモノマーの合成を行った。リン部位を二つ有する対称な3,6-ビス(2-ジフェニルオキシホスフィノ)-1,2-ジイソシアノベンゼンと、リン部位を一つ有する3-(2-ジフェニルオキシホスフィノ)-6-メチル-1,2-ジイソシアノベンゼンを根岸クロスカップリング、もしくは鈴木-宮浦クロスカップリングをキーステップとする方法で合成した。これらのジイソシアニドは、光学活性有機パラジウム開始剤を用いるリビング重合条件下、単独では重合しなかった。しかしながら、まず3,6-ジメチル-4,5-ジプロピルオキシメチル-1,2-ジイソシアノベンゼンを重合させて得られるリビングオリゴマーを調製してから上記含リンモノマーを反応させたところ、同モノマーのポリマーへの取り込みが確認された。生成したコオリゴマーに対して再び3,6-ジメチル-4,5-ジプロピルオキシメチル-1,2-ジイソシアノベンゼンを反応させることで、ホスフィン含有ユニットが、リンを含まないユニットからなるオリゴマー鎖に挟まれた構造の新規オリゴマー配位子が得られた。これら新規オリゴマーを配位子とする触媒的不斉合成について検討した。反応として、単座配位子が高い触媒活性を発揮する触媒反応として知られる、スチレンのヒドロシリル化を選んだ。まず、リンNMRより決定したポリマーへのリン元素の導入率をもとに、リンとパラジウムの比が4:1となるように、リン含有オリゴマーとCp(allyl)Pdを不活性雰囲気下で混合した。このように調製した触媒を用いたところ、69%eeの選択性でスチレンのヒドロシリル化体が生成した。
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