研究概要 |
多種類のアルコール類が共存している系で特定のアルコールのみを認識し系外に取り出すことができれば有機合成化学、反応機構の見地から価値が高い。本研究で他のアルコール類が存在しても1,2-ジオールを選択的に分子認識する系を見出した。本年度見出した結果は以下の通りである。キラルビスオキサゾリン(L^*)触媒、Cu(II)触媒の存在下に、メソ-あるいはラセミ1,2-ジオールにフェニルイソシアナートを反応させると、L^*、Cu(II)、1,2-ジオールの3者からなる錯体にフェニルイソシアナートが反応して1,2-ジオールのモノカルバモイル化が効率的に起こり、且つ、メソ-1,2-ジオールの場合は不斉非対称化、ラセミ1,2-ジオールの場合は動力学的光学不斉分割が効率的に起こった。具体的には、例えば、-40℃でcis-1,2-シクロペンタンジオー及びcis-1,2-シクロヘキサンジオールでは86%ee、cis-1,2-シクロヘプタンジオールでは91%ee、cis-1,2-シクロオクタンジオールでは93%eeであった。フェニルイソシアナートによるカルバモイル化の代わりに塩化ベンゾイルによるモノベンゾイル化も起こることは本研究の開始以前に既に見出しているが、モノベンゾイル化体はアシル基移動のために、1,2-ジオールの構造に依存して%eeが大幅に低下する場合があった。例えば、cis-1,2-シクロペンタンジオールのモノカルバモイル化は86%eeであったが、モノベンゾイル化では0%eeとなった。ラセミジオールの動力学的光学不斉分割も同様のモノカルバモイル化反応により達成されたが、その%eeは不斉非対称化におけるものよりも若干低かった。例えば、trans-1,2-シクロヘキサンジオールのカルバモイル化は、-78℃で28%収率63%ee、rtで68%収率18%ee、cis-1,2-シクロヘキサンジオールのモノカルバモイル化は-40℃で69%収率86%ee、rtで92%収率76%eeであった。
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