本研究では、自動合成装置化を指向し、フルオラス糖鎖合成を2層系で行い、効率化を図ることを目的にしている。本年度は、フルオラス合成法の一般的な二層系反応を検討すべく、相間移動触媒としてよく知られるクラウンエーテルをフルオラス化することに注力した。 アミノメチル-18-クラウン-6を文献に倣い合成し、このアミノ基にすでに開発してきたフルオラスタグであるBfp基、Hfb基を導入した。このようにして合成したフルオラスクラウンエーテルを用い、有機合成反応を試みた。ここでは、KCN-クラウンエーテル存在下、アシルシランとアルデヒドを反応させる交差ベンゾイン反応を例に、合成したフルオラスクラウンの評価を行った。 予期に反し、合成したフルオラスクラウンが有機溶媒に難溶で、クラウンエーテルの機能を評価するには至らなかったが、今後の研究に貴重なデータが得られた。 Bfp誘導体は単純な2層系分配法では容易に回収できないことがわかった。そこで、フルオラスシリカを充填した市販のフルオラスカラムを用いたが、ノウハウとでも言える操作上の問題点も明らかになった。 また、二層系反応などに適したフルオラスタグとしては、従来のBfp基やHfb基などよりも、その中間的性質を有するタグが有効であることが強く示唆された。 一方、装置化への基盤技術の検討にも着手した。まず、すでに上市されている遠心機型分液装置を用い、フルオラス溶媒-有機溶媒の分配に関する予備的検討を行った。また、当初予定していた液滴向流分配クロマト装置とともに、近年発達の著しいマイクロリアクターによる液滴反応も有望であると考え、マイクロミキサーの整備とその予備的検討を開始した。いずれも予期したとおり、装置化に適していると判断された。 以上のように本研究の基盤的データの拡充を行うとともに、次年度以降へ繋がる糖鎖合成への準備も進めた。従って、本研究は次のステージに遅滞なく進めることができる。
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