研究概要 |
本研究では、自動合成装置化を指向し、フルオラス糖鎖合成を2層系で行い、効率化を図ることを目的にしている。本年度は、フルオラス糖鎖合成法の基盤技術に関する研究を推進すると共に、界面でのグリコシル化反応の制御という新たな指導原理を開発すべく、二層系グリコシル化反応を検討した。 6位に遊離の水酸基を有するメチル2,3,4-O-Bfp-D-グルコピラノシドをフルオラス糖受容体とし、種々のフルオラス化した糖供与体との反応を検討した。まず、フッ化2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-D-マンノピラノシルを糖供与体とし、活性化剤としてAgC104-Cp2HfCl2を用いる反応について検討した。その結果、Et20-Novec(2:1)系では、71%と高い収率でフルオラス糖鎖合成が進むものの、2層系での反応は全く進行しないことがわかった。さらに、N-フェニルトリフルオロアセトイミデートを糖供与体にTfOTmsを活性化剤として反応を行ったところ、Et20-Novec(2:1)系では、フッ化糖と同様に、72%の収率でフルオラス糖鎖合成が進行した。しかし、二層系では生成物をTLC上確認するのみであった。このように糖供与体のフルオラス化の程度をあげた方が良いことが示唆された。そこで、新規フルオラス糖供与体としてN-フェニルペンタデカフルオロオクタン酸イミデートを設計合成した。トリフルオロアセトイミデート体と同様に反応を行ったところ、Et20-Novec(2:1)の均一系で99%と極めて良好にグリコシドを与えることを見出した。現在、二層系での反応を鋭意検討中である。 以上のように本研究では、最終年度における糖鎖合成へ繋がる貴重なデータが得られると共に、波及的な新規グリコシル化反応の開発にも成功した。従って、本研究は最終ステージに遅滞なく進めることができる。
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