研究概要 |
本研究では、糖加水分解酵素の糖転移能を利用することにより、高分子材料表面にオリゴ糖鎖をブロック単位で一気に直接付加する革新的な方法論を開発し、それを用いて糖鎖修飾された高分子医用材料を合成することを目的とした。 糖鎖高分子材料の機能評価 糖鎖高分子を用いて材料表面の疎水性測定(接触角測定等)や細菌接着・たんぱく質吸着についての顕微鏡観察などを行い,材料の生体適合性についての評価を行うため、オリゴ糖の還元末端を選択的に修飾する基盤技術を開発した。すなわち、フリーのオリゴ糖に、水溶性脱水縮合剤を作用させたところ、新規活性化糖誘導体および糖オキサゾリンが高い収率で生成することを見出した。また、興味深いことに、これら活性化糖誘導体は、糖加水分解酵素により認識されることが分かった。そこで、各種糖受容体との反応を検討した結果、配糖化反応が効率よく進行することを明らかにした。今後、生体内における複合糖鎖の機能解明のため、糖鎖-タンパク質問および糖鎖-糖鎖間相互作用について、学内の他の研究グループとの連携を図りながら、表面力測定装置や原子間力顕微鏡鏡などを用い,観測を行う予定である。 熱応答性高分子による酵素反応の制御 N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)は、35℃で相変化を起こし、水分子の脱水和を伴う凝集を可逆的に示すことが知られている。そこで、キチナーゼの阻害剤NIPAMに結合し、温度制御により、キチナーゼによる触媒反応を制御可能な反応系を設計した。すなわち、N-アセチルラクトサミンンを糖供与体とする酵素的ラクトサミニル化反応により還元末端に重合基を有するモノマーを調製し、NIPAMとラジカル共重合させることにより、熱応答性高分子を合成した。生成高分子は、オリゴ糖鎖の含有量により、相転移温度が著しく上昇し、糖鎖高分子材料としては、これまでに報告されているうちで最高の転移温度を有する熱応答高分子材料を合成することができた。
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