やわらかな「ひも」状の高分子セグメントで組み立てられる「かたち」は、高分子の基本特性を決定する本質的な役割を担っているが、直鎖状および単純な分岐状構造以外には高分子の「かたち」を精密かつ自在に設計・合成することは極めて困難な課題とされてきた。このため高分子の「かたち」によって創出できる物性・機能の設計にはこれまで大きな制約が課せられていた。本研究では、申請者らが独自に開発した、環状オニウム塩基を有する末端官能性高分子前駆体(テレケリクス)の高分子間静電相互作用による自己組織化と選択的共有結合変換を組み合わせた効率的合成システム(Electrostatic Self-Assembly and Covalent Fixation)を発展させ、以下の検討を行った。 1. 4種の三環状二重縮合トポロジー(α、β、γ、およびδグラフ図形)高分子の合成を試みた。このうちδグラフ高分子については効率的合成に成功しているが、他の3種(α、β、およびγグラフ図形)の高分子トポロジー設計に、双環高分子のθ型および手錠型高分子の特定の位置にアリル基を導入した高分子前駆体のメタセシス縮合環化反応を用いるため、その前駆体となるH型テレケリクスの調製に関する検討を行った。 2. スピロ型多環高分子トポロジーの構築を目的として、水酸基を持つ環状および双環状テレケリクスからそれぞれアセチレン基とアジド基を導入する反応システムを構築し、Click Chemistryプロセスを適用した非対称カップリング反応プロセスを確立した。これにより、三環スピロ型高分子トポロジー(三連環型)、および三環スピロパドル型高分子トポロジーの構築に成功した。
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