研究課題
本研究は、昨年に引続いて近赤外の光照射でも光エネルギー変換機能をもつ膜タンパク質/色素複合体を基板上で配向を制御して人工的に組織化することを目的とした。そして、近赤外域の光照射でも高効率な光エネルギー変換機能をもつタンパク質色素複合体(アンテナコアコンプレックス、LH-RC)の膜界面での電子ならびにプロトンの輸送機能の解析を行った。特に、LH-RCと類似した機能をもつタンパク質色素複合体を合成ならびに分子生物学的手法を用いて作成し、電極基板上でのそれらの複合体の自己組織化を行った。そして、その複合体の動的な構造変化と連動したその電子伝達能について光誘起電流応答から評価した。ここでは、また、C末端(C-His)とN末端(N-His)にHis-tagを持つLH1-αタンパク質ならびにSH基をもつLH2タンパク質それぞれデザインし、これらのタンパク質を基板上に組織化を行い、その評価を光電流測定と原子間力顕微鏡(AFM)により行った。また、金電極上に組織化したLH1-RCおよびLH2タンパク質複合体の吸収スペクトルを測定したところ、溶液中のスペクトルと同じものが得られ、LH1-RC複合体およびLH2タンパク質の吸着が確認できた。これらのことから、LH1-RCおよびLH2タンパク質複合体は構造を保ったまま安定に電極上に組織化できることが確認できた。また、金電極上でのLH1-RC付近の光電流action spectrumの測定では、C末にHis-tagをもつLH1-RCでのみLH1-RC複合体の吸収に由来するピークが880nm付近に観測された。このことから、LH1-RCは、配向制御して電極上に組織化されていることがわかった。また、アルケンチオール誘導体をさらに基板に追加吸着させると、光照射波長に依存した顕著なその作用スペクトルが得られることがわかった。
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