研究概要 |
昨年度に引き続き、光散乱法,沈降平衡法,蛍光法,円二色性などの手法を用いて,各種の高分子ナノ集合体の構造解析および解離-会合平衡特性を行った. (1)両親媒性高分子電解質の水溶液中で形成される会合体構造:ドデシル基と種々の電解質基を有するランダム共重合体は,塩水溶液中で花形ミセルを形成していることを実証した.ただし,そのループは高分子鎖のもつ剛直性により,持続長によって定まったサイズをもつ.そのため,全てのドデシル基が疎水性コア内に取り込まれているわけではない.この結果は,これまで明確でなかった両親媒性ランダム共重合体のミセル構造に,重要な知見を与えた. (2)高分子リビングアニオンの非極性溶媒中での逆ミセル形成:高分子の精密重合において重要であるリビングアニオン重合は,非極性溶媒中で行われるため,リビングアニオン末端は逆ミセルを形成している.その会合数および会合定数の特性化は,同重合反応動力学を支配する重要な課題であったが,我々は光散乱法を用いてシクロヘキサン中のポリブタジエンリビングアニオンの会合特性化を始めて行った.その結果を用いて,同系における真の成長反応速度定数を見積もった. (3)光学活性らせん高分子の会合誘起円二色性:光学活性なポリフルオレン誘導体とポリシラン誘導体が溶液中で会合形成にともなって誘起される円二色性について調べた.特に,誘起EL素子としての利用が期待されている前者については,溶媒や側鎖の微妙な変化にともない,逆符号の円二色性が誘起されることを見出した.この円二色性を誘起する多重らせん状会合体の形成機構に関するモデルを提唱した.
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