研究概要 |
(1)主鎖分子設計と酸化還元能ニトロキシド(TEMPO)を側鎖ラジカル種、ポリエーテル骨格を主鎖とする高分子は、電解液に不溶ながら適度に膨潤し、ガラス転移温度7gは室温以下と低く、TEMPO置換ポリメタクリレートに比べ柔軟であった。炭素繊維集電体への密着性、相容性の向上により、ラジカル含有量の高い複合電極でも容量高い充放電挙動(80Ah/kg)を示した。また主鎖にポリノルボルネンを選択したラジカルポリマーでは、光架橋の導入によりレドックス薄膜が容易に作成でき、成形性を付与した新しい電極活物質として、薄型かつ柔軟な有機ペーパー電池につながることを示した。 (2)ラジカル高分子膜での電子・物質移動過程の解析と電極作製の最適化TEMPO置換ポリノルボルネンを光架橋し得られる高分子薄膜のサイクリックボルタモグラムは、膜厚約250nmまでピーク電位幅の狭い表面吸着に由来する挙動を示し、迅速かつ定量的な電子移動過程を支持した。また、炭素との複合電極の走査電顕像より炭素繊維の周り約100nm厚みで高分子が覆う形態が観察され、高分子層内をホッピングして電子伝達されることが示唆された。 (3)n型ラジカルポリマーの合成と全有機電池への展開ポリ(ニトロキシルスチレン)では、置換基の電子効果によりレドックス対(p, n型)の選択および酸化還元電位の調節が可能であることをはじめて明らかにした。一方、酸化還元電位の異なる、例えばn型酸化還元能を有するポリ(ガルビノキシルスチレン)を負極、TEMPO置換ポリマーを正極として試作したセルでは、酸化還元電位差に対応する0.7Vに繰り返し安定な電位平坦部を示し、全有機から成る電池の動作をはじめて実証した。 以上とりまとめ、酸化還元ラジカル高分子の分子設計・合成と特性、特に次世代のエネルギー貯蔵材料の新たな道筋を示した。
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