研究概要 |
1.ジャイアントベシクルの自己生産系 ポリアニオンであるDNAをベシクル内部で複製するには、アニオン性の極性基をもつ膜分子を用意する必要がある。アミダイト法を用いて、リン酸エステルを親水基とする膜分子を合成した。このアニオン性膜分子は、リン酸緩衝液/15%メタノール混合溶液中で、コレステロールを添加するとユニラメラ様のジャイアントベシクルを形成した。さらに、両親媒性膜分子前駆体を加えると、自己複製ダイナミクスが起こることを確認した(第88回化学会春季年会口頭発表3L3-17)。 2.ジャイアントベシクル内ポリメラーゼ・チェーン・リアクション リン脂質ジャイアントベシクル中でポリメラーゼ・チェーン・リアクション(PCR)法により、鋳型DNA (1229bp)のDNA増幅を行ない、SYBR Green Iにより内水相中での二本鎖DNAの複製過程を可視化すると共に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)で鋳型DNAの複製が行われていることを確認した。さらに、FCM分析により、蛍光量を増大させたべシクルが全体の10%弱におよぶこと、またDNAは約100倍に増加したことを明らかにした(第88回化学会春季年会口頭発表3C6-25)。 3.DNA複製とジャイアントベシクルの自己生産ダイナミクスの連携 両者のダイナミクスをカップリングさせるために、疎水的で膜に溶け込むコレステロールを、一本鎖15量体DNAにポリエチレングリコール鎖で繋いだ連結分子を合成した。この分子は、末端に相補的な配列を持つ鋳型DNA(100量体)を、膜上につなぎ止める作用がある。蛍光顕微鏡観察、生成したDNAのPAGE分析により、本反応系は、膜上で鋳型DNAの相補鎖を合成することを明らかにした(Soft Matter, 2006)。 以上の研究成果により、2つのダイナミクスを同期させる基盤が確立した。
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