研究概要 |
これまで,申請者はジヒドロフェナジンを用いるニトロニルニトロキシドラジカル置換ラジカルカチオン種を合成し,そのものが,分子内で強い強磁性相互作用を示すことを世界に先駆けて報告している。バルクの磁性を発現させるためには,安定ラジカルの構造を検討する必要があり,平成17年度は,まず,種々の構造を検討した結果,フェルダジールラジカル置換体がフェリ磁性的相互作用を示すことを明らかとした。さらに,フェリダジールラジカル置換体の安定化を図る為,フェルダジール部の合成法を含めて検討し,N,N-ジアリールフェルダジール置換基が有効である事を明らかとした。次年度,それらの電荷移動塩を合成し,磁性を検討する予定である。これまで強い磁性的相互作用を示す安定ラジカル置換ラジカルイオン種は申請者らの化合物以外知られていない。同様な強磁性的相互作用を示す化合物を探索することは極めて重要であり,17年度はヘテロ原子架橋による平面型トリフェニルアミンを新たに設計・合成し,安定ラジカルカチオンの単離及び構造解明に成功した。次年度,この系においても安定ラジカルを導入し,安定ラジカル置換ラジカルカチオン種の磁性の検討する予定である。また,平成17年度は,ジヒドロフェナジン骨格を含む8π電子系化合物のラジカルカチオン種をスピン源とするジカチオン種の交換相互作用について検討を行い,磁性と軌道の相互作用を,理論計算を含めて検討を行った。また,同様な中性種は,EL素子における正孔注入層として有効であることを明らかにすると共に,ラジカルカチオン種は半導体的挙動を示すことを明らかとした。
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