研究概要 |
以下の項目について検討を行った,1)酸素架橋トリフェニルアミンのラジカルカチオン種の安定性および安定ラジカル置換酸素架橋トリフェニルアミンラジカルカチオン種の安定性と磁性,2)ラジカル置換ジヒドロフェナジンラジカルカチオン種と対ラジカルアニオン塩の調整,3)安定ラジカルアニオン種の開発,4)安定ラジカル置換アニオンラジカル種を想定したラジカル置換アクセプター配位子と磁性金属錯体の調製. 1)では,酸素架橋トリフェニルアミン体(二および三架橋体)を酸化し,通常のPF_6^-,FeCl_4についてラジカルカチオン塩を合成し,それらが室温下,空気中で安定であることを明らかとした.FeCl_4塩の場合,三架橋体ではπ骨格の間に強い反強磁性的相互作用が観測され,二架橋体では8Kで反強磁性体に相転移が観測された.二架橋体,三架橋体にイミノニトロキシドやニトロニルニトロキシドの安定ラジカルを導入しπ骨格の酸化を行ったところ,いずれの場合にもラジカル置換ラジカルカチオン種が安定な化合物として単離された.ラジカル部とラジカルカチオン部のスピンの間には,ラジカル置換ジヒドロフェナジンラジカルカチオン種において観測されたのとほぼ同様な,大きな強磁性的相互作用が観測された.2)ではフェルダジル置換ジヒドロフェナジンラジカルカチオン種のFeCl_4塩を合成し,ラジカルカチオン間に強い反強磁性的相互作用があることを明らかとした.3)ではイミダゾリデンを末端とするチエノキノイド骨格をもつπ電子系化合物が良好な電子受容体であることを明らかとしたが,そのものは単離できるほど安定ではなく,中性状態において一重項,三重項ビラジカルの寄与があり,容易なシス,トランスの異性化反応が起こることを明らかとした.また,単離可能なTCNQ型チエノキノイド骨格の合成法を確立した.4)では安定ラジカルと磁性金属間に大きな磁気的相互作用が観測された.
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