研究概要 |
本研究では環境中から直接抽出したDNAを用いてメタゲノムライブラリーを構築し、新規な分解性プラスチック分解酵素遺伝子の取得を試みた。 対象分解性プラスチックとしてポリ乳酸(PLA)を用いた。コンポスト中ではPLAは通常よりも容易に分解されるという知見から、土壌サンプルにはコンポストを採用した。まず、PLAディスクを用いたコンポストからのPLA分解菌(分解遺伝子)の集積を試みた。ディスク状に成形したPLAをコンポストへ埋設し、65℃にて10日間静置した後、PLA diskを採取し、その表面に付着した菌のDNAを直接抽出した。 次に、取得したDNAをSau3AIにて限定分解し、pUC18ベクターを用いたメタゲノムライブラリーを構築した。PLA分解活性のスクリーニングは、PLAエマルジョンを重層したLuria-Bertani(LB)寒天培地上で、clear zone形成能を有する株を検出することにより行った。メタゲノムライブラリー40,000株のスクリーニングの結果、PLA分解活性を示す株を7株取得した。その株が有するプラスミドをそれぞれpLA-M4,5,7,8,9,10,11とした。 各プラスミドの有するinsert DNAの塩基配列を決定し、BLASTX検索を行った。その結果、PLA分解酵素遺伝子と思われるORFを見出し、これらをそれぞれplaM4,5,7,8,9,10,11とした。これらの遺伝子はいずれもBacillus属のlipase遺伝子と最も高い相同性を示したが、アミノ酸配列においても50%以上の相同性を示す既知遺伝子は見られなかった。 これらのうち、plaM4を発現ベクターpET21a(+)に導入し、E.coli BL21(DE3)にて大量発現および発現タンパク質の精製を行った。精製PlaM4は70℃において最も高いエステラーゼ活性を有し、50℃にて2時間のインキュベーションを行った後でも、その活性を70%保持していた。このことから、PlaM4は熱安定性のPLA分解酵素であることが明らかとなった。
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