研究課題
中性子イメージングプレートを装備した中性子回折装置(BIX-3,BIX-4)を用い、ルブレドキシン(野生型、変異型)、ミオグロビン、ニワトリ卵白リゾチーム及びヒトリゾチーム、インスリン、DsrD、オリゴマーDNAを高分解能(1.5Å-2.5Å)で中性子構造解析が行われ、それらの全水素、全水和水が決定されている。これらのデータは、水素水和構造データベースに蓄積されている。そこで、水素を含む生体物質の構造生物化学を構築するため、1)形成されている水素結合の強度の定量化とそれによる分類、2)タンパク質やDNAの周囲の水和水の双極子モーメント場の計算とそれらの3次元表現を試みた。1)水素結合強度は結合角と結合長で表現され、結合角と結合距離が強い相関を有すること、水素形成アミノ酸残基間の距離と相関があることが判明した。2)水和水の各双極子モーメントをベクトル表示し、タンパク質分子構造の3次元表現に付加することで双極子モーメント場が表現できた。今後は現時点で水和水構造が求まっているすべてのタンパク質とDNAにこの表現を応用していき、双極子モーメント場の構造生物化学的意味を検討する。また、これらの結果を普遍化するため新たなタンパク質β-lactoglobulinの水素水和水構造を決定することにした。β-lactoglobulinはα-β転移が生ずるタンパク質で所謂プリオンタンパク質のモデルタンパク質と考えられるので、それの水素結合、水和水構造は大変興味がある。それの中性子回折実験を行うことにしそれの大型単結晶育成を開始した。結晶成長相図を作製し、準安定領域で大型結晶育成を試み体積1mm^3以上の大型単結晶が得られた。.
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