研究課題/領域番号 |
17350081
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山本 泰彦 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 教授 (00191453)
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研究分担者 |
三田 肇 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 講師 (00282301)
長友 重紀 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 講師 (80373190)
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キーワード | タンパク質 / ヘム錯体 / 耐熱性 / 電気化学 / 電子移動 / NMR / 熱変性 / 非共有結合性相互作用 |
研究概要 |
好熱性水素細菌(Hydrogenobacter thermophilus)シトクロムc_<552>(HT)と緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)シトクロムc_<551>(PA)はアミノ酸配列と高次構造が類似しているが、HTの変性温度はPAに比べて30℃以上も高い。私共は、熱安定性に重要であると考えられる部位のPAのアミノ酸残基をHTでの対応するアミノ酸残基でそれぞれ置換することにより、PAより熱安定性が高く、変性温度が異なる一連の変異体を調製し、これらのタンパク質の立体構造の解析と電子伝達タンパク質であるシトクロムcの機能の指標である酸化還元電位(E_m)の計測を行っている。この研究を通して、シトクロムcの分子構築原理を明らかにし、新規有用生体高分子を創製するための分子設計指針の発見を目指している。平成18年度に実施した研究の主な成果は、次の1-4が得である。 1.酸化型HTの変性温度は109.8℃であるが、アミノ酸置換によりタンパク質内部の疎水性コアの安定性を高くすることにより、116℃の変性温度をもつタンパク質の創製に成功した。 2.アミノ酸置換により、還元型シトクロムcの安定性には影響を及ぼさず、酸化型シトクロムcの安定性のみを変えることに成功した。それらのアミノ酸置換を導入したシトクロムcでは、酸化型の安定性の上昇に伴い、E_mは単調に低下することを見いだした。 3.HTとPAの両方のヘム鉄近傍に存在するアミノ酸側鎖アミド基の位置をアミノ酸置換により調節してE_mに与える影響を解析した結果、部分的に正に分極したアミド窒素原子がヘム鉄に近いほどE_mが高くなることを実証することができた。 4.タンパク質でヘム近傍のループ部分の内部運動が、電子移動反応に対するエントロピーの寄与を通してE_mの調節にかかわっていることを明らかにした。
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