研究概要 |
ヘムタンパク質は活性中心に補欠分子としてプロトポルフィリンIX鉄錯体(通称ヘム)を有し、様々な機能を発揮していることが知られている。このヘムは通常、非共有結合でヘムポケットと呼ばれるタンパク質マトリクスと相互作用しているため、容易に天然のヘムを除去してアポ化することが可能である。本研究ではこの点に着目し、アポ化したタンパク質に非天然ヘムあるいは金属錯体を挿入することにより、天然とは異なるユニークな機能、あるいは天然を凌駕する特性を有するヘムタンパク質の創製をめざした。 本年度は、昨年度の研究成果をもとに、以下の3つの項目を重点的に実施した。 1.ミオグロビンの酸化触媒活性の劇的向上 ミオグロビンは、酸素貯蔵タンパク質であり、酸化触媒活性は非常に低い。しかし、基質結合部位を人工的に構築する目的でヘム末端に適した化学修飾を施すことにより、ペルオキシダーゼに匹敵する優れた酸化触媒に機能改変を施すことに成功した。 2,ヘム異性体の高酸化状態の検出と反応性の検討 ヘムの類縁体である鉄ポルフィセンとコロール錯体について、ミオグロビン、ヘムオキシゲナーゼ、ペルオキシダーゼ中での、高酸化活性種中間体の存在の証明と、反応性について評価した。 3.ヘムタンパク質ポリマー構築 シトクロムb562及びミオグロビンのタンパク質表面にヘムを共有結合でつなげることにより、分子間のヘム-ヘムポケット相互作用形成に基づいた、超分子構造ヘムタンパク質集合体を得た。
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