研究課題
基盤研究(B)
ヘムタンパク質は活性中心に補欠分子としてプロトポルフィリンIX鉄錯体(通称ヘム)を有し、様々な機能を発揮していることが知られている。このヘムは通常、非共有結合でヘムポケットと呼ばれるタンパク質マトリクスと相互作用しているため、容易に天然のヘムを除去してアポ化することが可能である。本研究ではこの点に着目し、アポ化したタンパク質に非天然ヘムあるいは金属錯体を挿入することにより、天然とは異なるユニークな機能、あるいは天然を凌駕する特性を有するヘムタンパク質の創製を実施した。1.コバルトポルフィセンを有するミオグロビンにおいて、従来のコバルトポルフィリンを有するミオグロビンよりも、劇的に酸素親和性が向上した。2.アポミオグロビンに新たに鉄コロールを挿入することに成功し、得られた再構成タンパク質は、グアイアコールの一電子酸化反応の触媒として有効であることを明らかにした。3.鉄ポルフィセンを有する西洋わさびペルオキシダーゼにおいて、従来の天然のペルオキシダーゼよりも10倍以上の酸化触媒活性を示し、鉄ポルフィセンで初めてcompound Iのスペクトルを観測した。4.ミオグロビンのヘム末端に基質結合部位を修飾することにより、天然のペルオキシダーゼ相当の活性を獲得した。また、チオアニソールの酸化が極めて良好に進行した。5.ヘムタンパク質表面にヘム分子を共有結合で修飾することにより、分子間でのヘムーヘムポケット相互作用が形成され、マイクロメーターサイズのヘムタンパク質ファイバー(超分子ポリマー)の構築がAFMで観測された。
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