本研究では、ナノポーラスアルミナ膜と金属酸化物磁性体との複合化による、高周波数帯域磁性材料の創製を目的としている。このために、本年度は石英ガラスを基板として、RFマグネトロンスパッタリングによるNiZnフェライト(Ni_<0.5>Zn_<0.5>Fe_2O_4)薄膜の作製条件の確立と、形成した薄膜試料の結晶構造、直流磁気特性、および、高周波磁気特性の検討を中心に研究を進めた。その結果、スパッタ時の石英ガラス基板温度を室温〜700℃に制御したいずれの試料においても、Ni_<0.5>Zn_<0.5>Fe_2O_4の結晶化による回折ピークが観測され、基板温度の上昇にともなう回折ピークの先鋭化が観測された。回折ピーク幅から見積もられた結晶粒径は5〜40nmであり、基板温度を変化させることによって、薄膜試料中に生成する結晶の粒径を数nmから数十nmの範囲で制御できることが明らかとなった。また、結晶粒径が〜10nm以下の試料においては、室温で超常磁性状態の発現が観測された。さらに、高周波透磁率測定の結果、粉末焼結試料では200〜300MHz付近で透磁率が急激に減少するのに対し、700℃に加熱した石英ガラス基板へのスパッタリングにより作製した結晶性薄膜試料(結晶粒径〜40nm)においては、透磁率は約2GHzまで不変であり、薄膜化によって高周波磁気特性が大きく改善されることが明らかとなった。 ここで得られた薄膜試料の作製条件に基づいて、ナノポーラスアルミナ膜へのNiZnフェライトのスパッタリングを行った結果、薄膜試料がアルミナ膜の形状を反映しながら成長することを見出すとともに、フェライトナノロッド(直径〜200nm、軸長〜1μm)が二次元的に配列したナノロッド・アレイ試料の作製に成功した。
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