本研究では、ナノポーラスアルミナ膜と金属酸化物磁性体との複合化による、高周波数帯域磁性材料の創製を目的としている。われわれは、平成17年度の研究成果として、RFマグネトロンスパッタリング法による石英ガラス基板上へNiZnフェライト(Ni_<0.5>Zn_<0.5>Fe_2O_4)薄膜の形成において、スパッタ時の石英ガラス基板の温度を室温〜700℃に変化させることによって、薄膜試料中に生成する結晶の粒径を5〜40nmに制御できることを見出すとともに、このナノ結晶性薄膜試料においては高周波磁気特性が大きく改善され、結晶粒径〜40nmの試料で透磁率が〜2GHzまで不変であることを明らかにしている。さらに、ナノポーラスアルミナ膜へのNiZnフェライトのスパッタリングによって、フェライトナノロッド(直径〜200nm、軸長〜1μm)が二次元的に配列したナノロッド・アレイ試料の作製に成功している。そこで本年度は、フェライトナノロッド試料の結晶性を改善し、高周波数領域での透磁率を向上させることを目的として、結晶粒成長の促進効果が期待されるCuを添加したNiZnCuフェライト(Ni_<0.2>Zn_<0.6>Cu_<0.2>Fe_2O_4)について、スパッタ法による試料の作製と、得られた試料の結晶構造、および磁気特性について検討を行った。その結果、基板温度200℃で形成した試料の結晶粒径はNiZnフェライトの場合の基板温度400℃に対応する〜20nmとなり、Cuの添加によって低温域での結晶成長が促進されること、さらにNiZnCuフェライト試料はNiZnフェライト試料よりも軟磁性化して、高周波透磁率が増大することを明らかにした。
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