研究概要 |
本研究では,ナノポーラスアルミナ膜と金属酸化物磁性体との複合化による,高周波数帯域磁性材料の創製を目的としている。われわれは平成17〜18年度の研究成果として,スパッタ法による石英ガラス基板上へのNiZnフェライトおよびNiZnCuフェライト薄膜の形成において,成膜時の石英ガラス基板の温度を室温〜700℃に変化させることによって,薄膜試料中に生成する結晶の粒径を5〜40nmに制御できることを見出すとともに,このナノ結晶性薄膜試料においては高周波磁気特性が大きく改善され,結晶粒径〜40nmの試料で透磁率が〜2GHzまで不変であることを明らかにした。さらに,ナノポーラスアルミナ膜へのNiZnフェライトのスパッタによって,フェライトナノロッド(直径〜200nm,軸長〜1μm)が二次元的に配列したナノロッド、アレイ試料の作製に成功している。そこで本年度は,フェライトナノロッドの形成機構の解明を試みるとともに,フェライトナノロッド、アレイ試料の磁気特性を詳細に検討した。その結果,成膜の初期過程においては,フェライトのスパッタ粒子がナノポーラスアルミナ膜の孔の縁に堆積してフェライトナノドットを形成し,ナノドットを核としてスパッタ粒子の堆積が進行することによってナノロッドが生成することを明らかにした。さらに,フェライトナノロッド、アレイ試料においても,ナノ結晶性薄膜試料と同様の高周波磁気特性の改善を観測するとともに,ナノロッド、アレイ試料においては,ロッド内とロッド間の磁気相互作用を独立に変化させることが可能であり,ロッド径とロッド長の比(アスペクト比)を変化させることで,試料全体の磁気異方性ならびに磁化容易軸の制御が可能であることを見出した。
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