研究概要 |
有機デバイスは次世代の素子として広く注目を集めている。例えばその代表である有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子は次世代表示材料として活発に研究されている。そこでは機能の集積によるデバイス化,基盤技術の確立と新たな高い能力を秘めた材料の創製が重要な役割を担っている。有機ELでは新規発光材料開発という観点と,素子化における発光材料および電荷輸送材料,電極などの組み合わせの観点からもまだまだ解決されなければならないハードルが山積する。そこで,本研究では有機ELなどに有用な高機能発光有機材料の新たな創製と,そのデバイス化における物質構造制御や配向化の新たなアイデアに基づく技術の確立を検討した。 そのアイデアの中核は,高機能・多機能新規発光材料の創製,発光過程に重要となる界面での電荷移動,電荷再結合過程の機構の解明,界面のハイブリッド化などを含めて,トータルの性能向上のための分子構造・配向制御技術である。単にリン光材料を研究するなど製品化に繋げる研究ではなく,その後に続く有機デバイス全体の学理に資する研究である。 有機EL発光材料の励起子の挙動の研究(1)イリジウム錯体の合成方法の検討とその学理の確立。トリスキレート錯体における光学異性体や幾何異性体を合成分離し,光学異性化および幾何異性化反応が励起子の失活過程にどのように寄与しているのかを解明した。(2)分子内芳香族2発色団連結系において右手・左手円偏光を発光する材料の合成と光学異性体の分割を行い,円偏光発生を確認した。(3)テトラアリールシラン部位により青色リン光材料の励起子を閉じ込め可能なデンドリマー型材料の合成し発光挙動を明らかにした。
|