本研究の目的は、100℃以上で作動可能な中温燃料電池を開発することによって、従来の固体高分子形燃料電池(PEFC)が持つ課題を解決し、自動車及び家庭用燃料電池の早期実用化を目指すことである。多くの中温プロトン導電体が150℃以上で導電性を失ったり、もしくは導電率を保つために過度の加湿を必要としている中で、我々が見出したSn_<0.9>In_<0.1>P_2O_7は150から300℃の無加湿条件でも約0.1Scm^<-1>のプロトン導電率を示すことができた。従って、このプロトン導電体を燃料電池の電解質に使用した場合、燃料電池総合効率の向上、Pt使用量の低減もしくは代替化、さらには燃料多様性等が期待できる。 H19年度にPtが150℃以上で一酸化炭素に被毒されないことを示したが、今年度はMo_2C-ZrO_2触媒が同じく中温で高い一酸化炭素耐性を持つことが見出された。この特徴を活かして、メタンからブタンまでの炭化水素を燃料として直接使用するアノード及び燃料電池の開発にチャレンジした。PtとMo_2C-ZrO_2両触媒とも、温度の上昇とともに分極抵抗が減少し、特に300℃ではともに1.2Ωcm^2以下に達していた。また、二つの触媒とも開回路では生成物が全く観察されないが、放電とともに電流効率100%で二酸化炭素が生成していた。二つのアノード触媒の違いは主に燃料電池のOCVに現れ、Mo_2C-ZrO_2の方がPtよりも低電位側で酸化反応を起こすことが見出された。
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