研究概要 |
本年度の研究実施計画に従い、ブロック間に紫外線により切断可能な官能基を有する種々のポリ(ε-カプロラクトン)-block-ポリスチレン2元ブロック共重合体(PCL-b-PS)、ポリバレロラクトン-block-ポリスチレン2元ブロック共重合体(PVL-b-PS)、および、ポリエチレンオキシド-block-ポリスチレン2元ブロック共重合体(PEO-b-PS)を合成した。得られたブロック共重合体の分子特性を諸装置(GPC, DSC, VPO, MO, H-NMR)で算出した後、紫外線によるブロック間の切断条件を詳細に調べた。例えば、PVL-b-PSの場合、71-88%の主鎖が紫外線照射により切断することが明らかとなった。現在、この主鎖切断が100%進行するような紫外線照射条件を検討中である。さらには、これらのモデル2元ブロック共重合体の効率的な大量合成法を模索中である。 得られた各種2元ブロック共重合体の高次構造を、放射光を用いたX線小角散乱(SR-SAXS)法により解析した。紫外線照射および未照射の両方の系において、結晶性鎖の結晶化前後でミクロ相分離構造は変化しなかった。すなわち、数十nmの直径を有するナノ球中でホモポリマー(または、ブロック鎖)の結晶化が起こることを確認した。また結晶化が起こる温度は、空間的束縛のないホモポリマーに比べて数十度以上低いことが分かった。これらの系の結晶化挙動を示差走査熱量計(DSC)で調べたところ、(1)通常のホモポリマーが結晶化する温度領域では、ナノ球中に拘束されたホモポリマーは結晶化しないこと、(2)主鎖を切断した場合(すなわち、ナノ球中に閉じ込められたホモポリマー)の結晶化速度は主鎖を切断しない場合(すなわち、末端が界面に固定されているブロック鎖)よりも遅くなることが分かった。現在分子特性の異なるブロック共重合体により上記の結果の再現性を調べると共に、この現象に対する結晶化メカニズム上の理由を検討中である。
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