光学活性基を側鎖に有するポリシランは剛直棒状形態を有し、分子量が小さいときには、明確なサーモトロピック・コレステリック液晶を形成し、分子量分布が狭い(Mw/Mnが1.1以下)ポリシランでは、コレステリック液晶相の下に、スメクチック相が出現し、分子長に相応するスメクチック層長を持つ。本研究では、分子量が異なる二つの試料を混合し、スメクチック相の挙動を調べた結果、分子量が近い時は、分子量分布の広がりを認識し、スメクチック相が不安定化されるのに対して、分子量が著しく異なる試料の混合では、二つのスメクチック相が相分離をすることがわかった。これはスメクチック相の場では化学構造的に同種の分子でありながら、異種分子として認識しあうということを意味する。一方、スメクチック液晶相は特異なずり流動特性を示し、ずり方向に対して分子軸が垂直に並ぶことが知られている。その垂直配向様式には二通りあり、二つの配向メカニズムが考えられる。一つは、層間のスリップが優先的に起こり、層がずり方向に並ぶというメカニズミであり、もう一つは、層内では分子は液体的であるため、分子の軸に垂直な方向が優先的に流動するというもので、いずれも、分子軸はずりに垂直方向に並ぶ。この二つのメカニズムを明らかにするために、液晶セグメントとポリスチレンセグメントからなるジブロック共重合体を調製し、液晶セグメントがネマチック液晶およびスメクチック液晶状態にある温度で、ラメラあるいはシリンダーミクロドメインを形成している液晶-非晶ジブロック共重合体に定常流せん断を印加した。せん断印加後、各方向から小角X線回折像を撮影し、液晶およびミクロドメインの配向を判定した。その結果、ネマチック液晶相ではプレート基板に層は平行配向する(平行配向)のに対して、スメクチック液晶相では垂直に並ぶ(垂直配向)ことを確認した。
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