研究概要 |
本研究では、ポリオレフィンの主鎖に特異な環状構造を周期的に導入することにより剛直性を持たせ、自発的配向する液晶相を形成する高分子を合成し、更に、合成した高分子を液晶紡糸することにより、折畳みを形成しない高強度配向繊維を作製する技術を開発することを目的としている。このため、平成17年度はポリエチレンにシクロペンタン構造をランダムに導入した(エチレン-ヘキサジエン)共重合体および、シクロペンタン構造とメチレンが交互に有するポリ(メチレン-1,3-シクロペンタン)の結晶および液晶の固体高分解能^<13>C NMRスペクトルを固体NMR装置を用いて化学シフトおよび緩和時間測定を行った。 用いた試料は架橋ジルコノセン触媒によるエチレンと1,5-ヘキサジエン(HD)の環化反応を伴う共重合により得たシクロペンタン構造の含有率1.8, 9.7, 20.3mol%のランダム共重合体である。 固体高分解能NMRでは、結晶領域のみならず、非晶の構造についてもコンホメーション、分子運動性を議論することが可能である。上記試料のCP/MAS測定を行ったところ、シクロペンタン構造の含有率が9.7mol%以上では(エチレン-HD)共重合体の非晶部が明らかに通常のポリエチレン非晶と異なるトランスリッチな構造をとっていることが明らかとなった。シクロペンタン構造の取り込みによって、通常のポリエチレン非晶とは異なる、トランスリッチな構造を形成させるという興味深い結果が得られた。 また、分子運動性の情報を得るために^<13>Cスピン-格子緩和時間(T_1^c)の測定を行った。これにより、シクロペンタン構造の含有率の低い試料では結晶部、非晶部共に分子運動性の異なる2つの領域が存在することが明らかとなり、シクロペンタン構造の含有率が20.3mol%の試料では、結晶相、非晶相ともに分子運動性の高い1成分のみが存在するという興味深い結果を得た。
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