クモの糸が防弾チョッキ、縫合糸、ストッキングなどの新素材として注目されている。絹糸が紫外線で劣化する例にもあるように、新素材としてのクモの糸の紫外線照射に対する影響を調べることは非常に重要である。 1.屋外で紫外線の影響による蜘蛛糸の力学強度を計測するために、屋外に張っている蜘蛛の巣の力学強度を計測する装置を開発した。まずは、クモの巣に近づけて縦糸や横糸を手動で引っ張ってその力学強度を測定できる強度メーターを作った。これによって、クモの巣における糸の強度の大きさが把握でき、最終的に1g程度の強度の測定が可能になった。次に、研究者の意図どおりに巣を張ってくれないので、巣の面に対応して強度が計測できるように、測定センサーを三次元方向に移動できるように設計した。実際に、屋外にて糸の張力-伸びを自動計測するための簡易式力学測定器を試作し、その性能のチェックを行っている。 2.季節ごとにジョロウグモから採取した牽引糸に紫外線を照射し、その際の雲井と表面の電子顕微鏡観察を行っている。その結果、紫外線照射とともに牽引糸表面には微小な物質が発生していることが分かった。この発生の原因を探るべく、時間依存性、照射位置、照射環境等を変えて実験を行っている。また、風を防止した状態での紫外線照射実験を繰り返した。その結果、微少な物質は時間とともに増大することがわかり、さらに、絹糸との比較実験を行っている。
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