クモの糸が防弾チョッキ、縫合糸、ストッキングなどの新素材として注目されている。絹糸が紫外線で劣化する例にもあるように、新素材としてのクモの糸の紫外線照射に対する影響を調べることは非常に重要である。 1.屋外で紫外線の影響による蜘蛛糸の力学強度を計測するために、屋外に張っている蜘蛛の巣の力学強度を計測する装置を開発した。巣の面に対応して強度の計測のためにヘッドが三次元方向に移動できるように改造した。その結果、屋外にてクモの巣における糸の張カ-伸びを自動計測するための性能のチェックを二年間にわたり行い、力学計測が可能になった。 2.季節ごとにジョロウグモから採取した牽引糸に紫外線を照射し、その際の雲井と表面の電子顕微鏡観察を行っている。その結果、紫外線照射とともに牽引糸表面に変化が起こっていることが分かった。この発生の原因を探るべく、時間依存性、照射位置等を変えて実験で確めている。 3.一方、昼光性のジョロウグモの糸は紫外線によって力学的に強化されるが、夜行性のズグロオニグモの糸は紫外線照射によって容易に劣化し力学強度は低下することを見出した。このことは、夜行性から昼光性に進化したクモは太陽光の下で、巣が紫外線によって強化されることによって生活力を維持できる適正を勝ち得たものと思われる。 4.クモの糸の実用的な強さを測るべく、65kgの重さの人間がクモの糸のぶら下がることに初めて成功した。
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