研究概要 |
ポリアクリル酸(PAA)を含む塩溶液中に浸漬されたポリビニルアルコール(PVA)とPAAを架橋させたゲル内部にヒドロキシアパタイト(HAP)を形成する実験を行った。本方法により当該ゲル内部に隙間無くHAPを充填することが可能であり、ゲル外部にはHAPは形成されなかった。また当該塩溶液はHAPに関して不飽和であることが種結晶の成長実験から判明した。ゲル内部全域にHAPが形成されるまでの途中段階ではHAPが充填された固体状領域とHAPが形成されていないゲル状領域が共存しており、ゲル状領域の減少に伴い固体状領域が増加してやがて全領域が固体状態(平衡状態)となった。塩溶液の濃度を変化させたところ、或る塩濃度以下では平衡状態はゲル状態であり、或る濃度以上では平衡状態が固体状態となった。 上記知見とX線粉末回折、ICP(Inductively Coupled Plasma atomic emission spectroscopy)、EDAX(Energy Dispersive Analysis of X-ray)による分析結果から以下のように実験結果を説明した。ゲル状領域はPVA/PAAゲルにCa^<2+>,HPO_4^<2->がイオン結合と水素結合により吸着した超分子ゲルである。固体状領域はPVA/PAA網目とHAPの固溶体である。それら超分子ゲルと有機無機固溶体は相転移(開放系の)の関係で結ばれる。さらにこの超分子ゲルは軟骨の基本構造を与えるものであり、有機無機固溶体は骨格の基本構造を表している。即ち軟骨が開放系の相転移により骨格となる。 このメカニズムはCaCO_3骨格やSiO_2骨格の形成にも適用される。いずれの場合にも骨格は軟骨の開放系相転移によって形成されると結論できる。
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