研究概要 |
GaN中のErは母体励起で発光強度が弱いため、発光強度が高いGaN中のEuの原子配列構造の特徴などをGaN中のErと比較検討することによりErの発光強度を上げる試みを行い、デバイス化への指針を得た。 Eu:GaNは濃度およそ2%でEu発光強度が最大となる。この時、EuはTd対称より対称性の低いC_<3v>対称をとっていることをRBS,EXAFS等により明らかにした。また、母体励起されたエネルギーはトラップを介してEuにエネルギー移動するメカニズムを明らかにした。さらに、発光スペクトル、X線回折結果等の解析より、Euは濃度2%付近から格子間サイトを占めるようになり、これが母体励起に関与していることを明らかにした。これらの情報を参考に、GaN中のErとの比較を行なった。Erは約4%でその発光強度は最大を示す。1%程度の濃度ではErはGaN中でTd対称を保っていることが示唆されたが、4%付近では対称性が低下していることが分かった。また、トラップも形成されていることがわかったが、Eu:GaNの場合のように、エネルギー移動に関わる準位が共鳴するような系ではなく、エネルギー移動がスムースに行なわれない可能性を明らかにした。すなわち、InやA1を添加し、バンドギャップを変化させ、トラップの準位を変えることでエネルギー移動のしやすさをコントロールすることで発光強度の増大が見込まれることを示した。また、Euと同様、2%付近からErは格子間サイトを占めることがわかり、これらが発光に寄与している可能性を明らかにした。格子間サイトを占める割合は成長中のV/III比で変化することも明らかにした。これらの結果より、トラップ準位制御(バンドギャップ制御)および格子間サイト制御(V/III比制御)によりデバイス化に必要な発光強度を得る指針を確立した。
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