研究課題
基盤研究(B)
本報告書は、平成16,17年度科学研究費補助金基盤研究(B)(2)によって行った「新しい室温磁性半導体MnGeP2を用いたトンネル磁気抵抗素子の作製」(課題番号17360009)の研究成果をまとめたものである。この研究の目的は、平成13-15年度科学研究費補助金基盤研究(A)(1)におけるカルコパイライト型室温磁性半導体研究を通じて見出された新しい三元化合物磁性体MnGeP2について高品質の薄膜を得るための製作条件を明確にし、得られた膜についてさらなる物性評価を行うとともに、この膜を用いてトンネル磁気抵抗素子を作製することにあった。トンネル磁気抵抗素子を実現するためには、平坦性の高い磁性体薄膜を作製することが必要である。GaAsまたはlnP基板上に作製されたMnGeP2薄膜の表面モフォロジーは悪く、かなりの凹凸が見られ、このままではトンネル素子としては利用できないことが分かった。平坦性の向上のためにGeのバッファー層を導入したところ平坦性は大幅に改善したが、透過型電子顕微鏡とEDX分析の結果、MnGeP2に混じってMnPのグレインが混在していることが明らかになった。相分離を抑制するために第1原理熱力学計算にもとづき基板温度を上げて成長した。この結果得られたMnGeP2薄膜は単相となったが、高混成膜したMnGeP2は室温で磁性を示さなかった。このため、当初の予定を変更し、バルクでの磁性が明瞭なMnPについて、平坦なエピ膜が得られる成膜条件を探った。得られたMnPとCoFeを用いてトンネル磁気抵抗素子の作製を試み、磁気抵抗の観測に成功した。今後、磁性をもつMnGeP2の平坦な膜の形成に成功した場合にトンネル磁気抵抗素子を作製するための要素技術を確立することが出来た。また、この研究を進める中で、注意深い電子顕微鏡観察の結果、高混成膜した場合に表面にナノウィスカーが成長し、条件によってはウィスカーで覆われることが見出された。このウィスカーの評価の結果、GeまたはMnPであることがわかり、いずれも無触媒でのウィスカー成長であった。この結果は、本研究の主題ではないが、副産物として非常に重要な成果であると判断して最後に報告する。
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すべて 雑誌論文 (18件)
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