ZnOの優れた励起子機能を発光デバイスとして活かすには、p型層の実現が必要である。しかし直接p型ZnOやZnMgOを得ることは極めて困難である。本研究では、p型酸化物とZnO、MgOとの超格子構造による擬似混晶を実現し、ZnO光デバイスへの応用を目指すものである。 (i)MBEを用い、酸化銅の成長を行った。得られた酸化銅は、成長条件に応じてCuOまたはCu_2Oの組成を持つ。Cu_2Oの組成を持つ酸化銅は正孔密度10^<16>cm^<-3>程度のp型を示した。 (ii)Cu_2OとZnO、MgOとの超格子構造によるサブバンド間エネルギーを計算し、Cu_2Oの膜厚が5nm以下の場合に禁制帯幅3.4eV以上の擬似混晶が得られることがわかった。またMBEにより表面平坦性を保ったまま超格子構造が作製でき、Cu_2O/MgO超格子の禁制帯幅は3.5eVであった。 (iii)酸化ガリウムの成長を行い、基板温度800℃程度においてn型のGa_2O_3結晶が得られた。禁制帯幅は4.9eV、電気的には高抵抗(>10^6Ωcm)から電子密度10^<17>cm^<-3>程度のn型伝導を示した。 (iv)CuGaO_2の成長を1000℃で行った。成長直後には多結晶を示す傾向が強いが、熱アニールによりc軸配向が得られた。電気的には正孔密度8.7x10^<14>cm^<-3>、移動度3.5cm^2/Vsのp型伝導が得られた。 (v)本研究の目的であるZnOとCuGaO_2の超格子構造を作製したが、良質な超格子を得られなかった。ZnOの膜厚が非常に薄い場合にp型を示すものもあったが、全般的に評価が困難であった。 (vi)擬似混晶によるp型化の実現にはまだ壁が高いことが判明した。しかし本研究の過程において、Ga2O3が深紫外光デバイスとして有望な機能を持つことがわかった。これは本研究の遂行によって得られた大きなセレンディピティと考えている。ZnO系光デバイスを越えて一気に深紫外領域の光デバイスを目指す意義は大きく、本研究の波及効果としてその進展が大いに期待される。
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