研究概要 |
本研究の目的は,固体表面でのオルトーパラ転換における磁気効果の機構解明を行うことである。初年度には,超高真空中で準備された単結晶Cr_2O_3試料での転換速度測定と,その試料に強磁場(5T)をかける装置の開発を行った.また強磁場下での転換速度を精密に測定するために、新たにオルトーパラ弁別測定のためのレーザー誘起蛍光法の開発を進めた. 本年度は、レーザー誘起蛍光法の測定感度と測定精度を向上させ,オルトーパラ弁別法として確立させた.感度向上のために,赤外光電子増倍管検出器を導入し高感度オルトーパラ転換計測を可能にした。オルトーパラ測定精度は蛍光強度と分子の量子状態数に対する線形性に依存する.蛍光の時間スペクトルを測定したところ、圧力と回転量子数に依存して蛍光寿命が異なることが明らかとなった.寿命補正をすることで,オルトーパラ比を精度良く測定できるようになった.続いて、吸着分離法を用いた純オルト水素および純パラ水素源の開発を行った。レーザー誘起蛍光法を利用してオルトーパラ比をその場モニターすることで、純オルト水素とパラ水素の作成に成功した。前年度に開発した合成石英製超高真空セルを超伝導電磁石内に設置し,レーザー誘起蛍光法用の紫外レーザーパルスと蛍光測定用のガラスファイバーを精密に位置調整することで,磁場中でのオルトーパラ比測定に成功した.純オルト水素および純パラ水素を強磁場中において転換時間を測定したところ、磁場強度によらず気相中では転換が起こらないことを明らかにした。
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