本研究では、走査トンネル顕微鏡(STM)や原子間力顕微鏡(AFM)を駆使して、表面でのポテンシャル分布を高空間分解能かつ高エネルギー分解能で測定する技術を確立することを目的としており、これまで、STMによるSi(111)-√3x√3Ag表面上でのポテンシャル測定から、そのポテンシャルが表面上のステップや吸着物など電荷が局在しているとされる箇所の周囲数ナノメートルの範囲でポテンシャルが減少する様子が観察された。さらにそのポテンシャル変化が単純なクーロンポテンシャルでは説明されず、同表面に局在する表面二次元電子系に遮蔽されたポテンシャルであることを見出している。また遮蔽によるポテンシャルの振動構造、いわゆるフリーデル振動を初めて観測することに成功しており、これまで観察されている電子定在波との比較を行っている。またポテンシャル分布の測定から、ステップや吸着物での電荷量を見積もることができ、これまでの光電子分光の測定結果等と比較検討を行った。 またAFMによる研究では幾種類かのダングリング結合状態を持つGe/Si(105)表面において、各原子のダングリング結合状態間の電荷移動に伴うポテンシャル変化を静電気力の検出いわゆるケルビン力プローブ顕微鏡によって実現した。検出されたポテンシャル差は約15meVと第一原理計算によるポテンシャル値ともほぼ等しいことから、この手法により高精度でのポテンシャル測定技術が実現されていることを確認することができた。
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