研究概要 |
本研究の目的は,レーザープラズマ真空紫外光源(LPLS)から出射されるエネルギーの異なる二つの光子束により,クラスター系に同時に複合した電子励起状態を生成してその反応過程を探る新しい分光法を開発することである.この手法を用いて,まだ明らかでない部分の多い水/希ガス固体吸着系からの水クラスターイオンの電子遷移誘起脱離の機構,さらに水クラスターに異種の分子が取り込まれた分子集団(ヘテロクラスター)で起こる種々の反応を実験的に研究するための新しい手法を開発する. 平成17年度は,すでに稼働しているLPLS装置に増設する新しい独立したビームラインの設計を行い,その製作を開始した.Jobin Yvon社製の波長範囲36-108nmのトロイダル型回折格子を購入した.回折格子の駆動機構と出射スリットは,設計・製作を(株)真空光学に依頼し,すでに完成した.ビームラインを構成するその他の要素部品(入出射ミラー等)および真空系の設計はほぼ終了し,製作中である. これらの装置の設計・製作と並行して,現有のLPLSと実験装置を用いて単色光励起による水クラスターイオンの光励起脱離実験を行った.異なる下地,Ne, Ar, Krのそれぞれにおいて,入射光子エネルギー依存性,クラスターのサイズ分布,脱離するときの初期運動エネルギーを測定し,下地の希ガス原子の内殻励起に続く水クラスターへの電荷移行とその結果起こるクーロン反発による脱離機構を明らかにした.さらに炭化水素と水の共吸着系からの光脱離実験を行い,種々の構成を持つヘテロクラスターイオンの生成を確認した.
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